だってそれは重いんでしょう？

秘密というのは質量はなくともずしりと重い。時に足を鈍らせ、自由を奪い、視界を妨げもする。背負い続ける限りまとわりつく、泥のようなそれでいて自らの手では放り出すことすらできない。
ものによっては美しく、繊細。しかしそれでも秘すべきものは重く苦しいものが多いのもまた事実
少女は目の前に伏した、もう動かない女性だったものを見下ろす。
夫の浮気に心を痛め、しかし誰にも相談できずにやがて棘に支配されてしまい仮面を浮かび上がらせてしまった女。そして夫とその浮気相手を殺そうとしたのを少女が止めた、その命を奪うという形で。
別に珍しい話でもない。ではこの女性は哀れか？それとも憎むは夫と浮気相手か？

いや、違う。

少女は思う。
一人で抱え込んだその事実が重かったのではないのか、と。
女性は誰にも相談しなかった。友人にも親にも。気が付いていながら夫の行為を見過ごした。その事実を一人で抱え込みその結果潰れて負けてしまったのだ。棘に。
秘密は人の心を殺す。

ではどうすべきか？

──重いのなら分けて持てば良いのではないだろうか？

少女は死体からくるりと背を向ける。
そうだ分けてしまえばいいのだ。その考えは凄く良いものではないだろうか？少女は先ほど命を失った女性のことなどすっかり忘れた様子で上機嫌に夜の街を駆けだした。
これは、凄く良いアイデアではないだろうか！
笑みがこぼれるのを押さえきれずに少女は屋根を蹴って跳ぶ。重い物はみんなで分け合えば軽くなる。そうすれば潰れることなど無くなる。誰も不幸にならなくなる。では手始めに今回潰れてしまった原因になった話を広めよう！みんなで分けて持とう！
少女は幼かった。それ故に単純で、容易に歪んだ思想を正しいと思いこんだ。

そして数日後。
浮気の事実を近隣に暴露され、妻に先立たれた男とその浮気相手はその町から逃げるように姿を消した。

少女は首をかしげる。どうしていなくなってしまったんだろう？秘密は人を潰してしまうほど重いのに。それが無くなったのだから、軽い気持ちになれたのではないのだろうか。ああ、そうか。

気持ちが軽くなったから出て行ったのか。

少女の思考は更におかしな方向へと進んでいく。
重みが無くなったのならその場に縛られる必要がない。自由になるのだ。いわば重りの外れた風船だ。飛んでいってしまう可能性の方が大きい。ああ、簡単なことに気が付かなかったなぁ、と少女は一人で納得する。でも、仕方ないよね？潰れるぐらいなら飛んでいってしまうことぐらいどうってことないじゃないか。仕方ない。
秘密を作るからこうなってしまうのだから。仕方がないことだと少女は笑う。

さぁ次はどうしようか。どの重荷を持っていこうか！

少女は笑顔で歪んだ思想で無邪気に笑う。



シゾー１０歳ぐらい。個人情報握る楽しみを覚えはじめた原因。
属性値はカオスです。ロウでもニュートラルでもない思想。
流石にもうこんな無差別テロはしてない模様（自重を覚えた
でもおそらく心の奥底にはこの思想がこびりついてる。
別の意味で純粋、子どもらしく歪んでいるだけ。